学校法人会計における収益事業会計
(2021年6月1日更新)
1.学校法人の収益事業
学校法人は教育研究を目的とした非営利の法人ですが、学校法人でも収益事業を行うことができます。私立学校法第26条で以下のように定めています。
私立学校法 第26条(収益事業) 学校法人は、その設置する私立学校の教育に支障のない限り、その収益を私立学校の経営に充てるため、収益を目的とする事業を行うことができる。 2 前項の事業の種類は、私立学校審議会又は学校教育法第九十五条に規定する審議会等(以下「私立学校審議会等」という。)の意見を聴いて、所轄庁が定める。所轄庁は、その事業の種類を公告しなければならない。 3 第一項の事業に関する会計は、当該学校法人の設置する私立学校の経営に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。 |
収益事業の種類については、第2項に定めるとおり所轄庁が定めることとなっており、文部科学省所轄の学校法人では「文部科学大臣の所轄に属する学校法人の行うことのできる収益事業の種類を定める件」(平成20年8月20日文部科学省告示第141号)により18業種が規定されています。
知事所轄の学校法人については、各都道府県の告示によって定められており、都道府県によって若干内容が異なるようです。
なお、学校法人の収益事業と、税務上の「収益事業」は別概念です。学校法人の収益事業に該当しても税務上の収益事業に該当するとは限りません。
学校法人が収益事業を行いたい場合は、寄附行為にその事業の種類その他その事業に関する規定を設け、当該寄附行為につき所轄庁の認可をとることになります(私立学校法第30条第1項第9号)。
2.収益事業に関する会計基準
収益事業に関する会計は、上記の私立学校法第26条第3項に規定されているとおり、学校経営とは区分して特別会計として処理しなければなりません。
また、収益事業に関する会計処理については、学校法人会計の原則とは別に一般に公正妥当と認められる企業会計の原則に従うことが学校法人会計基準で規定されています。
学校法人会計基準 第3条(収益事業会計) 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第二十六条第一項に規定する事業に関する会計(次項において「収益事業会計」という。)に係る会計処理及び計算書類の作成は、一般に公正妥当と認められる企業会計の原則に従つて行わなければならない。 2 収益事業会計については、前二条及び前項の規定を除き、この省令の規定は、適用しない。 |
私立学校法と学校法人会計基準に従って、学校経営に関する部分と収益事業に関する部分は区分経理され、また、それぞれ適用すべき会計基準も異なることになります。
学校経営に関しては、学校法人会計基準をはじめ、一般に公正妥当と認められる「学校法人会計の原則」に従って処理することとなり、一方で収益事業に関しては、一般に公正妥当と認められる「企業会計の原則」に従って処理することになります。
3.学校法人に適用する一般に公正妥当と認められる「企業会計の原則」とは
一般に公正妥当と認められる企業会計の原則としては、上場企業が適用する各種の企業会計基準も考えられますが、それほど収益事業として大きくない場合には、中小企業が採用している税法基準に従った企業会計基準も一般に公正妥当と認められると言えるでしょう。
そもそも収益事業は、学校経営に比して大きくないことが前提とされており、収益事業の重要性はそれほど大きいとは言えません。
また、学校法人における収益事業は法人税法上の収益事業として確定申告することもあり、法人税法に従った税法基準による処理は実務的で効率的な処理とも言えます。
このため、上場企業が適用する各種の企業会計基準をそのままストレートに適用することは、コスト・ベネフィットの観点から適当ではありません。最終的にはどのような根拠に基づいて会計処理するのかは学校法人自身や監査人の考え方によりますが、多くの学校法人では税法基準に従っているのが実態かと思います。