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学校法人会計基準の一般原則

学校法人会計基準の一般原則

(2021年6月1日更新)

1.学校法人会計基準の一般原則

 学校法人会計基準では、会計の一般原則として以下のとおり規定されています。

 

学校法人会計基準 第2条(会計の原則)

 学校法人は、次に掲げる原則によつて、会計処理を行ない、計算書類を作成しなければならない。

一 財政及び経営の状況について真実な内容を表示すること。

二 すべての取引について、複式簿記の原則によつて、正確な会計帳簿を作成すること。

三 財政及び経営の状況を正確に判断することができるように必要な会計事実を明りように表示すること。

四 採用する会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法については、毎会計年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。

 

 学校法人会計基準の一般原則としては、「真実性の原則」「複式簿記の原則」「明瞭性の原則」「継続性の原則」の4原則が規定されています。あまり会計実務で考えたり、意識したりすることもないのですが、企業会計でも求められる会計の基本原則なので簡単に確認しておきましょう。

2.真実性の原則

 真実性の原則は、他の会計原則の上位原則と考えられており、他の会計原則を満たせば自ずと真実性の原則は満たされると会計学では考えられています。

 

 真実性の原則における「真実性」には、「絶対的真実性」と「相対的真実性」のふたつの概念があり、この原則で求める真実性は「相対的真実性」とされています。

 

 ひとつの経済事象を会計に描写するとき、会計処理には複数のやり方が存在し、唯一無二の処理というものはありません。このため、自ずとそこで表示されるものは「絶対的」なものではなく「相対的」になります。

 

 あくまで会計処理というのは合理的な根拠に基づいて「相対的」に正しければ問題ないのです。

3.複式簿記の原則

 簿記の処理方法には「単式簿記」と「複式簿記」のふたつの方法があり、学校法人会計基準では「複式簿記」を採用しています。

 

 単純な収支計算をするだけなら「単式簿記」でも可能ですが、資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表を作成するには複式簿記に則って処理しなければ作成できません。このため、学校法人会計基準では複式簿記を採用しています。

 

 また、この原則では、「すべての取引について、複式簿記の原則によつて、正確な会計帳簿を作成すること。」として、「すべての取引」を対象とすべき網羅性の原則も含まれていると考えられます。簿外債務などの簿外処理を認めないという原則です。

4.明瞭性の原則

 正しく会計処理されたとしても、最終的な結果報告である計算書類に明瞭に表示されていなければ、利用者は当該報告書を誤解してしまい、その内容を正しく判断することができません。このため、明瞭性の原則が求められます。

 

 この明瞭性の原則を担保する規定として、会計基準では各計算書類の記載方法、記載科目、様式等が規定されています。

 

 また、明瞭性の原則の中のひとつの大きな基準として「総額表示」の規定が設けられています。経営状況などの規模感や具体的な内容を理解するために純額表示ではなく総額表示が採用されています。

 

学校法人会計基準 第5条(総額表示)

 計算書類に記載する金額は、総額をもつて表示するものとする。ただし、預り金に係る収入と支出その他経過的な収入と支出及び食堂に係る収入と支出その他教育活動に付随する活動に係る収入と支出については、純額をもつて表示することができる。

5.継続性の原則

 財務報告のひとつの大きな機能として「期間比較」というものがあります。単年度の決算数値だけを見るのではなく、複数年度の決算数値を期間比較することで、学校法人の財政状態及び経営状況を正確に把握することができます。このため、期間比較可能性を担保することは会計上とても重要です。これを求めているのが継続性の原則です。

 

 継続性の原則は、会計処理だけでなく手続きや計算書類の表示方法についても継続的な適用を求めています。ただ、そうは言っても会計方針や表示方法が変更されることもあり、正当な理由をもって変更する場合はこれを認めていますので、絶対に継続適用しなければならないということではありません。

 

 なお、継続性の原則を担保する規定として、重要な会計方針を変更した場合は、その旨、その理由及びその変更による増減額を脚注として記載することを求めています(学校法人会計基準34条第2項)。

6.一般に公正妥当と認められる学校法人会計の原則とは

 私立学校振興助成法による補助金を受ける学校法人は、学校法人会計基準に従うことになりますが、学校法人会計基準に規定されていないものについては、学校法人会計基準第1条第2項で一般に公正妥当と認められる学校法人会計の原則に従うことが求められています。

 

学校法人会計基準 第1条(学校法人会計の基準)

 私立学校振興助成法(昭和五十年法律第六十一号。以下「法」という。)第十四条第一項に規定する学校法人(法附則第二条第一項に規定する学校法人以外の私立の学校の設置者にあつては、同条第三項の規定による特別の会計の経理をするものに限るものとし、以下第六章を除き「学校法人」という。)は、この省令で定めるところに従い、会計処理を行い、財務計算に関する書類(以下「計算書類」という。)を作成しなければならない。

2 学校法人は、この省令に定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる学校法人会計の原則に従い、会計処理を行ない、計算書類を作成しなければならない。

 

 第2項に定める一般に公正妥当と認められる学校法人会計の原則は、具体的に規定されているわけではありませんが、文部省が発する「通知」や日本公認会計士協会が公表する「実務指針」「委員会報告」「研究報告」などが適用されると考えられます。

 

 日本公認会計協会編「学校法人会計監査六法」には、諸規定・法規・報告書・通知が綴られているので、学校法人会計監査六法は学校法人会計に携わる上でよく利用されています。

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