学校法人における計算書類
(2021年6月1日更新)
1.学校法人会計基準における作成すべき計算書類(再掲)
前項の再掲となりますが、学校法人会計基準では、作成すべき計算書類を以下のように規定しています。
学校法人会計基準 第4条(計算書類) 学校法人が作成しなければならない計算書類は、次に掲げるものとする。 一 資金収支計算書並びにこれに附属する次に掲げる内訳表及び資金収支計算書に基づき作成する活動区分資金収支計算書 イ 資金収支内訳表 ロ 人件費支出内訳表 二 事業活動収支計算書及びこれに附属する事業活動収支内訳表 三 貸借対照表及びこれに附属する次に掲げる明細表 イ 固定資産明細表 ロ 借入金明細表 ハ 基本金明細表 |
各計算書類の具体的な内容については、お役立ち情報の各章にて解説するものとして、ここでは概要について説明していきます。
2.資金収支計算書
資金収支計算は、毎会計年度、当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容、並びに当該会計年度における支払資金の収入及び支出のてん末を明らかにすることを目的としています(学校法人会計基準第6条)。ここで「支払資金」とは、「現金及びいつでも引き出すことができる預貯金」とされています。
次に説明する事業活動収支計算書との大きな違いは、「諸活動に対応するすべての収入および支出」が対象である点で、借入などによる収入、返済による支出についても計算対象になります。
●内訳表の作成
資金収支計算書は、附随する内訳表として資金収支内訳表と人件費支出内訳表の作成が求められています。資金収支内訳表は部門ごとに区分した記載が求められ、以下のように規定されています。
学校法人会計基準 第13条(資金収支内訳表の記載方法等) 資金収支内訳表には、資金収支計算書に記載される収入及び支出で当該会計年度の諸活動に対応するものの決算の額を次に掲げる部門ごとに区分して記載するものとする。 一 学校法人(次号から第五号までに掲げるものを除く。) 二 各学校(専修学校及び各種学校を含み、次号から第五号までに掲げるものを除く。) 三 研究所 四 各病院 五 農場、演習林その他前二号に掲げる施設の規模に相当する規模を有する各施設 |
人件費支出内訳表についても各部門ごとの記載が求められています。
学校法人会計基準 第14条(人件費支出内訳表の記載方法等) 人件費支出内訳表には、資金収支計算書に記載される人件費支出の決算の額の内訳を前条第一項各号に掲げる部門ごとに区分して記載するものとする。 |
●活動区分資金収支計算書の作成
さらに、資金収支計算書を活動区分ごとに分類した「活動区分資金収支計算書」の作成が必要です。活動区分は以下の規定通りに区分して作成します。
なお、知事所轄学校法人は活動区分資金収支計算書の作成は不要とされています(学校法人会計基準第37条)。
学校法人会計基準 第14条の2(活動区分資金収支計算書の記載方法等) 活動区分資金収支計算書には、資金収支計算書に記載される資金収入及び資金支出の決算の額を次に掲げる活動ごとに区分して記載するものとする。 一 教育活動 二 施設若しくは設備の取得又は売却その他これらに類する活動 三 資金調達その他前二号に掲げる活動以外の活動 |
資金収支計算書や内訳表などの様式は以下のリンクを参考にしてください。
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3.事業活動収支計算書
事業活動収支計算書は、毎会計年度、当該会計年度の教育活動、教育活動以外の経常的な活動及びそれ以外の活動の、合わせて3つの活動に対応する事業活動収入及び事業活動支出の内容を明らかにするとともに、当該会計年度において基本金に組み入れる額を控除した当該会計年度の諸活動に対応する全ての事業活動収入及び事業活動支出の均衡の状態を明らかにすることを目的としています(学校法人会計基準第15条)。
学校法人会計基準 第15条(事業活動収支計算の目的) 学校法人は、毎会計年度、当該会計年度の次に掲げる活動に対応する事業活動収入及び事業活動支出の内容を明らかにするとともに、当該会計年度において第二十九条及び第三十条の規定により基本金に組み入れる額(以下「基本金組入額」という。)を控除した当該会計年度の諸活動に対応する全ての事業活動収入及び事業活動支出の均衡の状態を明らかにするため、事業活動収支計算を行うものとする。 一 教育活動 二 教育活動以外の経常的な活動 三 前二号に掲げる活動以外の活動 |
資金収支計算と異なり、借入による収入や返済による支出などを含まず、減価償却費を計上するなど、損益計算書に近いのが特徴的です。
事業活動収支計算書では、事業活動収支内訳表の作成が求められており、区分方法は資金収支内訳表と同様です。
学校法人会計基準 第24条(事業活動収支内訳表の記載方法等) 事業活動収支内訳表には、事業活動収支計算書に記載される事業活動収入及び事業活動支出並びに基本金組入額の決算の額を第十三条第一項各号に掲げる部門ごとに区分して記載するものとする。 |
事業活動収支計算書や内訳表などの様式は以下のリンクを参考にしてください。
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4.貸借対照表
貸借対照表は、期末時点での財政状態を把握するために作成されます。
学校法人の貸借対照表は、事業会社の貸借対照表と異なり、資産の部が固定資産、流動資産の順に表示される「固定性配列法」を採用している点が特徴です。また、資本金に代わって「基本金」という概念が使われています。
貸借対照表の内容をより具体的に理解するために、3つの重要科目について、固定資産明細表、借入金明細表、基本金明細表の作成が求められています。また、定性的な補足情報としての注記の記載も学校法人会計基準第34条で規定されており、当該規定に従った記述が求められます。
貸借対照表や明細表などの様式は以下のリンクを参考にしてください。
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5.計算書類以外の決算書(財産目録と事業報告書)
学校法人の計算書類は、学校法人会計基準で規定される2~4の各計算書類になりますが、学校法人は計算書類以外のものとして「財産目録」と「事業報告書」の作成が求められています。
私立学校法 第47条(財産目録等の備付け及び閲覧) 学校法人は、毎会計年度終了後二月以内に、文部科学省令で定めるところにより、財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書及び役員等名簿(理事、監事及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿をいう。次項及び第三項において同じ。)を作成しなければならない。 |
財産目録は各資産・負債の明細表、事業報告書は学校法人の1年間の概況を説明するものになります。
事業報告書の記載内容については、「私立学校法の一部を改正する法律等の施行に伴う財務情報の公開について(通知)」(平成16年 16文科高第304号)や学校法人委員会研究報告第12号「学校法人における事業報告書の記載例について」(改正平成28年1月13日、日本公認会計士協会)などが参考になります。