人件費支出の会計処理
(2021年6月1日更新)
1.人件費支出の会計処理
学校法人会計における人件費支出の小科目の内訳としては以下のものが定められています。
小 科 目 | 内 容 |
教員人件費支出 | 教員(学長、校長又は園長を含む。以下同じ。)に支給する本俸、期末手当及びその他の手当並びに所定福利費をいう。 |
職員人件費支出 | 教員以外の職員に支給する本俸、期末手当及びその他の手当並びに所定福利費をいう。 |
役員報酬支出 | 理事及び監事に支払う報酬をいう |
退職金支出 |
人件費支出については、その内訳として人件費支出内訳表の作成が求められており、人件費支出内訳表は以下のとおりです。
科目 |
教員人件費支出 |
本務教員 |
本俸 |
期末手当 |
その他の手当 |
所定福利費 |
(何) |
兼務職員 |
職員人件費支出 |
本務職員 |
本俸 |
期末手当 |
その他の手当 |
所定福利費 |
(何) |
兼務職員 |
役員報酬支出 |
退職金支出 |
教員 |
職員 |
(何) |
計 |
【リンク】人件費支出内訳表【第三号様式】
上記の人件費内訳表からもわかるとおり、教員と職員の区別だけでなく、本務・兼務の区分、支給内容の区分が必要です。
2.教員人件費と職員人件費の区分
教員として所定の要件を備えた者について、学校が教育職員(学長、副学長、教授、准教授、講師、助教、助手、校長、副校長、園長、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭等)として任用している者に係る人件費が教員人件費です(学校法人委員会研究報告第26号「人件費関係について」Q1、平成26年7月29日、日本公認会計協会)。
教員として任用された者が、教員と職員とを兼務している場合は、それぞれの担当時間、職務内容、責任等によって、主たる職務と考えられる方に分類し、按分計算のようなことはしません(学校法人委員会研究報告第26号Q2)。
研究員に対する人件費は、教授、助教授、講師等教員として研究所等に所属し、研究に携わっている場合には教員として取り扱われますが、単に研究員のみの場合にはその人件費は職員人件費となります(学校法人委員会研究報告第26号Q4)。
3.本務と兼務の区分
本務兼務の区分は、学校法人の正規の教職員として任用されているか否かによります。
「私立大学経常費補助金取扱要領」では、専任の教職員として発令され、当該学校法人から主たる給与の支給を受けているとともに、当該私立大学等に常時勤務している者を専任教職員としています。私立大学等の場合、この専任教職員は原則として本務者となります。
兼務者は本務者以外の教職員になります。
知事所轄学校法人では、各都道府県における私立学校経常費補助金交付要綱に基づいて定められる専任教職員の要件が、私立大学等の場合と必ずしも同一ではなく、また各都道府県によっても異なるため、専任の教職員か否かをもって、本務、兼務の区分の基準となし得ない場合が考えられます。
例えば、東京都においては、専任の教職員の要件を備えた者であっても学校法人が正規の教職員として雇用した者でない場合は本務者ではない旨を定めています。したがって、本務、兼務の区分は基本的には学校法人との身分関係が正規であるかどうかによることが妥当です(学校法人委員会研究報告第26号「人件費関係等について 」Q12)。
ただ、経常費補助金の算定において、専任か否かの判定は非常に重要になってくるので、経常費補助金交付要綱の内容についても確認していく必要はあります。
4.人件費と経費の区分
人件費と経費の区分は、雇用契約に基づいて支給されたか否かで判断します。このため、人材派遣料は人材派遣会社と学校法人との人材派遣契約によるものなので人件費ではなく経費になります。アルバイト料は、雇用契約に伴うものなので人件費に入ります。また、出向者に対する出向料は雇用契約に伴うものなので人件費になります(学校法人委員会研究報告第26号「人件費関係等について 」Q7)。
校医手当は、医師と直接雇用している場合は人件費になりますが、病院等の委託契約である場合には報酬となり経費となります。
また、よく実務上で間違えやすいのが、通勤手当の処理です。通勤手当を旅費交通費として経費処理するケースが散見されますが、通勤手当は人件費の中の「その他の手当」に含まれます。非常勤講師などの兼務教員等に対する交通費も通勤手当として、兼務教員の人件費に含めます。兼務教員・職員の場合、内訳記載がないため漏れてしまうことがありますので気を付けましょう。
一方で、学務、校務等のための出張費は、旅費交通費として、その用途の内容に従い、教育研究経費又は管理費として処理されることになります(学校法人委員会研究報告第26号Q6)。
5.役員と職員を兼務している場合の処理
常務理事が事務局長を兼務している場合など、役員と職員を兼務するケースがあります。この場合、当該学校法人の職員給与表又は職員給与の支給実態から、事務局長として妥当とされる額を職員人件費とし、これを超える額については役員報酬として取り扱うことが妥当と考えられます。この計算によって役員部分の給与が生じない場合には役員報酬の支給がないものとして取り扱うことになります(学校法人委員会研究報告第26号「人件費関係等について 」Q8)。
私学教職員共済組合掛金等の所定福利費についても役員分と職員分に分けて計算します。なお、役員分については「役員報酬支出」の内訳がないので、当該所定福利費は「役員報酬支出」に含めて計上することになります(同Q9)。
6.退職金に関する会計処理
退職金に関する会計処理については、個別会計処理の検討にて詳細解説します。