資金収支計算の目的
(2021年6月1日更新)
1.資金収支計算の目的は?
資金収支計算書は、学校法人会計と企業会計の最も大きな違いといえる計算書です。資金収支計算書の作成目的は、学校法人会計基準で以下のように定められています。
学校法人会計基準 第6条(資金収支計算の目的) 学校法人は、毎会計年度、当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容並びに当該会計年度における支払資金(現金及びいつでも引き出すことができる預貯金をいう。以下同じ。)の収入及び支出のてん末を明らかにするため、資金収支計算を行なうものとする。 |
上記の規定によれば、資金収支計算の目的は、以下のふたつに分解することができます。
- 当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容を明らかにする。
- 当該会計年度における支払資金の収入及び支出のてん末を明らかにする。
学校法人では教育研究活動を行う上で、授業料を受け取り、教職員に人件費を支払い、借入・返済をするなど、様々な活動が行われています。これらの諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容を明らかにすることが、ひとつ目の目的です。
学校法人会計基準では、資金収支計算書の記載方法や記載科目を規定し、諸活動に対応する収入・支出をわかりやすく表示することを担保しています。
ふたつ目の目的は、支払資金の収入・支出のてん末を明らかにすることです。学校法人が安定した運営を行うためには、適切に支払資金が使われ、期末時点において十分な支払資金が確保されていることが重要です。
このため、資金収支計算書では、どのような収入・支出があるのかを明らかにし、最終的な支払資金の期末残高を計算するようになっています。
2.資金収支計算書の構造と資金収支調整勘定
先ほどお伝えした通り、資金収支計算書には、ふたつの目的があります。
- 当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容を明らかにする。
- 当該会計年度における支払資金の収入及び支出のてん末を明らかにする。
資金収支計算書は、このふたつの目的を達成するために、2段階の計算構造を採用しています。
まず、ひとつ目の目的を達成するために諸活動に対応するすべての収入および支出を計上します。そして、ふたつ目の目的を達成するために、すべての収入および支出のうち、支払資金を伴わない取引を調整します。
収入と支払資金に差が生じて調整が必要となる取引の具体例として、授業料があります。授業料は前年度の3月末までに振り込まれる一方で、諸活動の該当年度で考えると、授業料収入は当期に計上することになります。支払資金の増加は前期である一方で、授業料収入は当期に計上するためギャップが発生し、調整する必要があります。
では、設例を使って資金収支計算書を確認しましょう。
【設例】 2001年度の授業料として、2000年3月末に、授業料100を振込みしてもらった。 この場合、2000年度と2001年度の資金収支計算書は以下のようになる。
【回答】 【2000年度】 収入の部 学生生徒等納付金収入 授業料収入 0 前受金収入 授業料前受金収入 100 資金収入調整勘定 前期末前受金 0 前年度繰越支払資金 0 収入の部合計 100 支出の部 翌年度繰越支払資金 100 支出の部合計 100
【2001年度】 収入の部 学生生徒等納付金収入 授業料収入 100 前受金収入 授業料前受金収入 0 資金収入調整勘定 前期末前受金 △100 前年度繰越支払資金 100 収入の部合計 100 支出の部 翌年度繰越支払資金 100 支出の部合計 100 |
2001年度の授業として徴収した現金は、2000年度の授業料前受金収入に計上します。翌年、2001年度の資金収支計算書の収入の部では、授業料収入100が計上されるとともに、前期の授業料前受金について資金収入調整勘定の前期末前受金のマイナス計上が行われ、前期から繰り越された支払資金100が計上されます。
前期末前受金以外にも、収入の部の資金収入調整勘定として「期末未収入金」、支出の部の資金支出調整勘定として「期末未払金」や「前期末前払金」などがあります。
資金収支計算書(第一号様式)の収入の部と支出の部のそれぞれ最後のほうに、資金収入調整勘定と資金支出調整勘定が計上されていますので、資金収支計算書【第一号様式】でご確認ください。
【リンク】資金収支計算書【第一号様式】
3.資金収支計算の方法(規定)
資金収支計算の具体的な方法は前項のとおりですが、学校法人会計基準第7条の規定で確認しておきましょう。
学校法人会計基準 第7条(資金収支計算の方法) 資金収入の計算は、当該会計年度における支払資金の収入並びに当該会計年度の諸活動に対応する収入で前会計年度以前の会計年度において支払資金の収入となつたもの(第十一条において「前期末前受金」という。)及び当該会計年度の諸活動に対応する収入で翌会計年度以後の会計年度において支払資金の収入となるべきもの(第十一条において「期末未収入金」という。)について行なうものとする。 2 資金支出の計算は、当該会計年度における支払資金の支出並びに当該会計年度の諸活動に対応する支出で前会計年度以前の会計年度において支払資金の支出となつたもの(第十一条において「前期末前払金」という。)及び当該会計年度の諸活動に対応する支出で翌会計年度以後の会計年度において支払資金の支出となるべきもの(第十一条において「期末未払金」という。)について行なうものとする。 |
第1項では資金収入について、第2項では資金支出について規定しています。
第1項より、資金収入の計算方法は以下の通りになります。
【資金収入の計算式】
当該年度の支払資金の収入 - ( 前期末前受金 + 期末未収入金 )
※ 前期末前受金 = 当該年度の諸活動に対応する収入のうち前会計年度以前の収入
※ 期末未収入金 = 当該年度の諸活動に対応する収入のうち翌会計年度以降の収入
前期末前受金および期末未収入金は前項の資金収入調整勘定になります。
次に、第2項の資金支出の計算方法を確認しましょう。
【資金支出の計算式】
当該年度の支払資金の支出 - ( 前期末前払金 + 期末未払金 )
※ 前期末前払金 = 当該年度の諸活動に対応する支出のうち前会計年度以前の支出
※ 期末未払金 = 当該年度の諸活動に対応する支出のうち翌会計年度以降の支出
前期末前払金および期末未払金は資金支出調整勘定になります。