学校法人会計における基本金とは
(2021年6月1日更新)
1.基本金とは
学校法人会計基準第29条で、基本金を以下のように定義しています。
学校法人会計基準 第29条(基本金) 学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その事業活動収入のうちから組み入れた金額を基本金とする。 |
基本金の定義について、学校法人委員会研究報告第15号「基本金に係る実務上の取扱いに関するQ&A」(最終改正平成26年12月2日、公認会計士協会)で、以下のとおり解説されています(Q1-1)。
●「その諸活動の計画に基づき必要な資産」
「その諸活動の計画に基づき必要な資産」とは、学校法人の基本的諸活動であるところの教育研究活動に必要な資産をいう。この場合の教育研究活動に必要な資産とは、これを広く解し教育研究活動に直接使用する資産のほか、法人本部施設・教職員の厚生施設等も基本金組入れの対象の資産となる。
●「継続的に保持する」
「継続的に保持する」とは、ある資産が提供するサービス又はその資産の果たす機能を永続的に利用する意思を持って、法人がその資産を所有するということである。
したがって、上記の「その諸活動の計画に基づき必要な資産」であっても、当該資産を取得した時点で将来取替更新する必要がないことが明らかな資産は、基準にいう「継続的に保持する」に該当しない。
また、法人が永続的に利用する意思を持って基本金設定の対象となる資産を取得した場合であっても、その後の法人の経営の合理化、将来計画の見直し等により当該資産を永続的に利用する必要がなくなった場合には、その時点で「継続的に保持する」ことに該当しなくなったと解すべきである。
●「保持するために維持すべき」及び「その事業活動収入のうちから組み入れた」
「保持するために維持すべき」とは、学校法人は、それぞれの建学の精神にのっとり、あらかじめ計画した教育研究等の諸活動を行うために必要な資産の価額を継続的に保持すべきものとして定め、基本金組入対象として当該価額を維持し続けることを担保するのが基本金制度であり、これが「保持するために維持すべき」の意味となる。
平成25年基準改正により収支の均衡状態を表示する計算書類は「消費収支計算書」から「事業活動収支計算書」に変更され、計算書類上では、収入から基本金組入額を先に控除するという方式ではなくなったが、基本金組入額控除後の収入と支出の均衡の状態を明らかにするという従来からの考え方は維持されている。
また、高額な固定資産の取得に係る基本金組入れを取得年度に集中することは、学校法人の収支の状況を歪めることとなる。したがって、取得に先行して、基準第30条第2項に定める組入計画に従い、年次的段階的に基本金組入れを行うことが肝要である。
2.第1号基本金から第4号基本金
学校法人会計基準では、第30条で以下のとおり第1号から第4号まで基本金の種類を定義し、それぞれに該当するものを基本金に組み入れるよう要請しています。
学校法人会計基準 第30条(基本金への組入れ) 学校法人は、次に掲げる金額に相当する金額を、基本金に組み入れるものとする。 一 学校法人が設立当初に取得した固定資産(法附則第2条第1項に規定する学校法人以外の私立の学校の設置者にあっては、同条第3項の規定による特別の会計を設けた際に有していた固定資産)で教育の用に供されるものの価額又は新たな学校(専修学校及び各種学校を含む。以下この号及び次号において同じ。)の設置若しくは既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために取得した固定資産の価額 二 学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産の額 三 基金として継続的に保持し、かつ、運用する金銭その他の資産の額 四 恒常的に保持すべき資金として別に文部科学大臣の定める額 2 前項第2号又は第3号に規定する基本金への組入れは、固定資産の取得又は基金の設定に係る基本金組入計画に従い行うものとする。 3 学校法人が第1項第1号に規定する固定資産を借入金(学校債を含む。以下この項において同じ。)又は未払金(支払手形を含む。以下この項において同じ。)により取得した場合において、当該借入金又は未払金に相当する金額については、当該借入金又は未払金の返済又は支払(新たな借入金又は未払金によるものを除く。)を行った会計年度において、返済又は支払を行った金額に該当する金額を基本金へ組み入れるものとする。 |
上記の通り、基本金として組み入れるべきものが第1号から第4号で規定されています。次項以降で各号の基本金について詳細解説していきます。