学校法人の監査総論
(2021年6月1日更新)
1.学校法人監査の目的と種類
学校法人では、経営に必要な人件費、固定資産購入費用など支出の大部分が、学生生徒からの納付金(授業料、入学料ほか)と国等からの補助金で賄われています。
学校法人が、教育条件の維持及び向上を目指し経営の健全性を保つためには、活動が目的に従って適正に行われていることや、計算書類が正しく作成されていることが必要であり、内部と外部の両方の目で監査を行う必要があります。
学校法人では主に以下3種類の監査があります。
- 公認会計士・監査法人による監査(私立学校振興助成法第14条第3項)
- 監事監査(私立学校法第37条第3項)
- 内部監査(任意)
公認会計士等と監事による監査は法定されており、内部監査は各学校法人が任意で行います。
公認会計士による監査については次章「公認会計士・監査法人による監査」で詳しく解説します。この章では、監事監査と内部監査について解説します。
2.監事監査
監事の選任については、私立学校法第38条第4項及び第5項に規定されています。
私立学校法法 第38条(役員の選任) 4 監事は、評議員会の同意を得て、理事長が選任する。 5 理事又は監事には、それぞれその選任の際現に当該学校法人の役員又は職員でない者が含まれるようにしなければならない。 |
監事は外部監事を含めた2名以上が選任されます。監事の監査範囲は、広範かつ理事の業務執行にも及ぶため、適切な知識を持ち、公正な立場で職務遂行できる者が求められています。
次に、監事の職務は、私立学校法第37条第3項で、以下の通り定められています。
私立学校法法 第37条(役員の職務等) 3 監事の職務は、次のとおりとする。 一 学校法人の業務を監査すること。 二 学校法人の財産の状況を監査すること。 三 理事の業務執行の状況を監査すること。 四 学校法人の業務若しくは財産の状況又は理事の業務執行の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後二月以内に理事会及び評議員会に提出すること。 五 第一号から第三号までの規定による監査の結果、学校法人の業務若しくは財産又は理事の業務執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを所轄庁に報告し、又は理事会及び評議員会に報告すること。 六 前号の報告をするために必要があるときは、理事長に対して理事会及び評議員会の招集を請求すること。 七 学校法人の業務若しくは財産の状況又は理事の業務執行の状況について、理事会に出席して意見を述べること。 |
監事の監査範囲は、業務監査、会計監査及び理事の業務執行の状況で、経営面だけではなく教学面も含めた広範囲な監査が求められています。
なお、会計年度終了後2ケ月以内に、理事会及び評議員会に監査報告書を提出する必要があります。また、重大な不正行為や法令・寄付行為違反を発見した場合は、所轄庁と理事会及び評議員会に報告することになります。
会計監査については、監事と監査人の監査範囲が同じであるため、情報交換し、両者が連携して監査を行うことが有用です。
3.内部監査
内部監査は、公認会計士・監査法人による監査や監事監査とは異なり、法律では定められていません。学校法人が、法人の状況や組織の規模など総合的に勘案して、必要に応じて内部監査部門を設置することになります。
内部監査を実施する場合は、例えば、教職員が理事長の指揮に従って学校の業務監査及び会計監査を行う場合があります。
内部監査とは、学校法人の各組織が「ルール通り」機能していることを検証する機能です。すなわち、不正・誤謬を排除するように設計された業務手順が、その実務執行部門において、理解され遵守されていることを確認することです。
規定どおり実務が運用されず、不正・誤謬の排除が有効に行われていない状況を把握したときには、理事者に対して、各部署への改善勧告を行うことを進言します。また、現状の規定では十分に機能しない可能性が検出された場合には、規定の改正を理事者に進言することも期待されています(学校法人委員会研究報告第 17 号「学校法人の監査人と監事の連携のあり方等について」(平成 22 年1月 13 日 日本公認会計士協会)Ⅰ2.(4))。